「顧客の声を拾いたい。」ビジネスの活動において、アンケートを取るという行為は日常的に行われているマーケティングのうちのひとつかと思います。

SNSが発達した現代では、アンケートのように企業側が耳を傾けるだけでなく、自然発生的にWeb上に顧客の声が広がりやすい環境が整っています。企業側がSNSでの炎上を恐れるのもそうした背景があります。

ソーシャルリスニングとは、顧客や見込み客の意見や欲求、感想などをソーシャルメディア上で見える化し、販売戦略に活かすマーケティング用語です。SNSでの話題性づくり、言及数を増やして、ブランドの認知度向上や売上アップを図る行為でもあります。

高まってきたソーシャルリスニングの重要性

レビューサイトやソーシャルメディアが普及した今、ユーザーのリアルな感想は非常に身近なものになっています。多くのユーザーが購入前にインターネット上で調べることが、もはや自然な行動になったということです。「この商品を使った人はどう感じているのか」「製品の満足度は高いか」「他サービスと比較するとどうなのか?」人によって検索の目的は様々ですが、知人からのおススメよりも、全く知らない顔も見えない人のレビューを購買の意思決定の参考にするケースもあります。

デジタルネイティブ世代が今後労働人口の中心を担うようになる中で、レビューの重要性はますます高まっていくでしょう。

デジタルネイティブ(世代) (digital native) とは、学生時代からインターネットやパソコンのある生活環境の中で育ってきた世代であり、日本では1980年前後生まれ以降が該当する
デジタルネイティブ – Wikipedia

ブランド言及状況の把握

1つ大事なこととして、ブランド名、商品名、サイト名などのSNSでの言及はSNS内だけでなく、検索エンジン内での順位・序列にも影響します。よって、次の事柄を把握しておく必要があります。

  • ソーシャルメディアにおける自社ブランド言及数・センチメント(ポジネガ)を把握する
  • 競合他社とブランド言及状況を比較する
  • 自社活動(キャンペーン、イベント、商品発売など)のインパクトを把握する

ソーシャルメディアにおける影響力を高めるのに必要な分析となります。

インフルエンサーの特定

インフルエンサーを早い段階で味方に引き込んでおくことは、SNS内での影響力を拡大する上で効果的な施策です。

  • インフルエンサーを発見し、ユーザー参加型のキャンペーンに招待する
  • インフルエンサーとの会話を活性化し、波及効果を高める

広報的リスクマネジメント

オープンなメディアほど炎上リスクも高まります。特にツイッターは誰でも見れて、短期間での拡散力もあるため、炎上に発展しやすい性質があります。意図せず炎上することを避けるため、あらかじめ炎上した際のシミュレーションをしておくことが企業側に求められます。

  • 風評や炎上の火元を把握する
  • 実際に炎上した時のシミュレーションをしておく(具体的にどう対応するか)
  • センシティブなキーワード(LGBTなど)からは距離を取る

消費者インサイトの抽出

潜在的ニーズである消費者インサイトを知ることは、未来を知ることでもあります。

  • 消費者が抱える商品への不満にスポットをあてる
  • 不満・批評を書き出し、解決策を考える
  • 解決策から、商品開発やマーケティング活動のヒントを得る

カスタマーサポートの強化

カスタマーサポートでは質とスピードの2点が同時に求められます。どちらも高めるにはどうすればいいかを考えます。また、アクティブサポートすることで不満を持った顧客をコアユーザーに変えることも行います。

  • 質・スピードを分けて分析する
  • 製品やサービスのサポートに要望や不満を持つユーザーに企業側から接触し、ユーザーの問題を解決する(いわゆるアクティブサポート)
  • 同時に満足してくれている顧客にもスポットをあてる(バランスをとる)

ソーシャルリスニングを行う際のポイント

顧客の声を聴くだけで満足していては意味がありません。大切なのは、ソーシャルメディア上で聴いた顧客の声を、改善や新たな施策へと活用していくことです。そこでソーシャルリスニングに初めて取り組む際のポイントを紹介していきます。

ツールの分析結果が全てではない

ツールを使っていながらも矛盾する考えのように聞こえるかもしれませんが、ツールのはじき出す結果は意識し過ぎないほうがよいでしょう。ツールとはいえ、完璧なものではないからです。重要なのは顧客の声の大局を掴むこと、時系列比較や競合比較といった相対比較のための数値としてはとても有効なのでそれぞれの活かし方を掴んでSNSを調査してみましょう。

競合と比較する為に活用する

ソーシャルメディア全体での言及数、平均との対比は気になるかもしれませんが、自社サービスを向上させる用途ではあまり使えるデータとは言えません。ひとつ業態が違えばSNSでのユーザー動向も異なってきます。あくまで近いジャンル。ピンポイントにターゲットとなる競合他社との比較をするために活用したほうが良いでしょう。

Twitterは分析対象から外さない

ソーシャルメディアの中でも、Twitterは書き込みを公開にしている人が多く、体験したこと、思ったことをすぐ気軽に投稿している傾向があります。そのメディア特性から時系列でのピークがはっきりと出やすく、市場心理がはっきりと分かりやすいです。最もソーシャルリスニングに向いたメディアだといえるのでツイッターでの分析は外さないようにしましょう。

分析対象メディアは定期的に見直すことも大切

ソーシャルリスニングでは、Twitterとブログが基本的な分析対象メディアに向いていますが、その他に何を分析対象として加えるのか、それは自社ブランドの特徴に合わせて検討します。例えるなら、Q&Aサイト(Yahoo!知恵袋など)、レビューサイト(価格コム、食べログ、Retty、Yelpなど)、SNS(Instagramなど)自社サービスのターゲット顧客が割り合い多く含まれそうなメディア選定は効率を上げてくれるでしょう。

世間のトレンドと販売施策のバロメーターとして認識する

ユーザーがソーシャルメディアで話題にするネタは幅広く、様々な情報が含まれています。自社のソーシャルメディア施策の反響をチェックするだけでは勿体ないです。他社の目立った新製品発表、ユーザーが興味を引くことに成功している販売施策、炎上している事例など、自社サービスの未来に活かせる情報がたくさん存在します。ソーシャルリスニングにおいては自社サービスに対する反響をみるついでに、全体的な俯瞰した視点も併せ持つとより価値を高めることができます。

まずは自分がソーシャルに参加する

ソーシャルリスニングをするには、ソーシャル(社会)なメディアに参加することがまず第一に必要です。インスタグラムを分析ツールとして使うなら、自らインスタグラムで積極的に情報発信をし、ソーシャル(社会)に仲間入りしておく必要がある。

積極的な情報発信、インフルエンサーたちとの会話・交流を通して、自社のアカウントを育てる。フォロワーを増やしていく。そうした営みを続けてこそ、はじめてソーシャルリスニングが活きてくると言えます。